« 2023年1月 | トップページ | 2023年3月 »

2023年2月

2023年2月24日 (金)

『超デジタル世界』の時代考察

34421015 1999年に、筑紫哲也の「ネット上の書き込みは便所の落書きに近い」という発言が物議を醸した。パソコン通信に続いて、2チャンネルが登場した当時である。今でも大概変化してはいない。罵詈雑言や犯罪の温床にもなっているのも事実である。昨年末ヤフーは、誹謗中傷やヘイトスピーチ防止のために、コメントに携帯番号の登録を必須化したのである。とは言え、ヤフコメは相変わらずの右ねじの人々の巣窟になっているのは否めない。戦争を煽り、現状追随のコメントばかりである。他方、2010年代からのDXやメタバースへの進展が活発になっている。AI(人工知能)だけでなくBT(生物工学)も加速している。そんな時代に適宜な出版がされた。『超デジタル世界』である。
 先日の信濃毎日新聞(19日付7面)に、マイクロソフトが開発したAIの対話型検索サイトBingに、不都合な回答があったとの記事が掲載された。AIによって人間が「あなたはバカで頑固者」などと回答されたということである。人間を威嚇したり、偽言を弄したりしたそうである。現在は多少改良され、対話は1回当たり5問5答に制限されているとの報道である。AIの限界である。海外研究生活が多い西垣通は、「欧米では、超一流の秀才が少なからずトランス・ヒューマニズムに傾倒している」(p39)と洞見している。トランス・ヒューマニズムが、宗教的ミッションと結合しているとの彼の哲学・思想的洞察は、さすがという外はない(p139)。
 21世紀がポスト・アメリカニズムの時代であるとの慧眼にも感嘆する。国際的対立と戦争は、ただプーチン・ロシアが悪くてウクライナが可哀想との単純な発想ではなく、「殺戮という行為を自分と結びつけてアウシュヴィッツのイメージをもつこと」(p48)が大事なのである。ドローンや無人機、更に殺人AI兵器の投入で、戦争と殺人の感覚がなくなる事態になっているのである。汎用AI万能論の思想の淵源だけではなく、マルクス・ガブリエルなどの哲学への言及と援用をしながらの卓見は、熟読に値する著述であると感嘆したことである。政治屋はおろか、日本の産官学のリーダーたちを「無邪気な少年少女」(p152)と批判していることに微苦笑したのである。日本の衰退を物語るのである。それは同時に、アメリカ帝国主義の転落を暗示しているのである。
 

| | | コメント (0)

2023年2月16日 (木)

凍てつく信州の寒さ

33675963 酷寒である。多分、今日は真冬日(一日の最高気温が氷点下)となるのではないか。内陸性気候に因るのである。寄る年波には、ズボン下(股引)が必須であるばかりでなく、就寝時は布団の中に湯たんぽを入れる。連れ合いは西日本出身なので、彼女の在宅時は、石油ファンヒーターのお出ましとなる(自分一人の時は、ワークマンの防寒ズボンと半纏を愛用しているので点火なし)。エアコンはあるが、殆ど稼働しない。わが家の節約生活は非常識である。世間では室内暖房器具の使用が当たり前になっているのである。回顧すれば、小学校の教室は石炭だるまストーブであったが、中学校の新校舎はスチーム暖房になっていて驚いたものである。
 こうした暖房器具は、時代に伴って変遷している。冬の夜には、掘り炬燵の周囲を布団を固めて、一家で寝ていたのは60年前の姿である。当然の如く、ストーブやエアコンはなく、火鉢程度である。当時の信州の家屋は隙間風が入り込み、寒暖差もあってその冷え込みが尋常でない。北海道から来訪した祖父も、その寒さに震えていたものである。掘り炬燵に入れる消し炭と木炭は、次第に豆炭も活用され始め、50年前になると豆炭あんかが登場し、布団の足元に入れて自室で一人寝する。電気炬燵も普及して、個室でラジオ講座やオールナイトニッポンに齧りついて夜更かししていた。それでも、翌朝目を覚ますと、吐く息の蒸気が布団の襟に凍り付いていることもあった。やはり電気炬燵と豆炭あんかだけでは部屋は寒く、半纏を着て寒さを凌いでいたのである。信州の受験生は二つの敵があった。一つは受験ライバルであるが、二つ目は氷点下の寒さである。受験の日々は寒さとの闘いという面が強かったのである。受験日には雪降りの中での、凍てついた会場入りということも稀ではない。暖かい地方の受験生が恨めしく思うこともあったのである。上京すると冬でも快晴の青空が毎日のように広がることに驚いた。薄いジャンパー着用で十分であり、他の学生にはキリギリス学生と見えたことだろう。
 他県の人には、信州は雪が多いというイメージがあるのだが、これはちょっと違う。確かに山沿いは2、3mの積雪があり、遠い銀嶺が美しいが、平地(盆地)での積雪は高々10cmほどで(昭和38年の最高60cm)日中に融雪してしまうことが多い。むしろ、夕方以降底冷えが始まり、みるみるうちに氷点下となって足元が冷えるのである。そして、翌朝のアイスバーン状態となった道路を運転する恐ろしさとなるのである。氷点下2、3度程度なら、「あれ、今日はあったけえ(暖かい)な」と思ってしまうのである。京都に住んだことがあるが、痛いと感じる寒さではなかった。大阪にもいたが、全然寒くない。大体、雪がちらほらと舞い散る程度で、吐く息が白くない。沖縄では毛布一枚で過ごした。南北に細長く狭隘な日本でも、所変われば気候(気温)も変わるのである。

| | | コメント (0)

2023年2月 4日 (土)

あの戦争の教訓

33480033 あの戦争は、昭和天皇の優柔不断と軍部・政府の独走、それに国民の熱狂との三者の共犯関係で成立していた、と分析している。現下の東アジア情勢も、天皇の政治権力は失墜しているが、国会という立法権力も追随して、戦争の条件は相似している。
 日露戦争においてカツカツで勝利したのだが、第一次大戦では協商側についた大日本帝国は、中国や南洋へと版図を拡大して、中国侵略の足掛かりを掴んだのである。成田龍一は、大正デモクラシーに注目して、政党政治の成立と帝国主義的侵略という錯綜した時代において、前半期に隆盛した民本主義が、「(対華二十一箇条要求について)吉野作造でさえ、『だいたいに於て最小限度の要求』」と主張していたと開示している(『大正デモクラシー』、p61)。近代化の過程のなかで国民国家が飛躍的に促進されたのである。大門正克は、「大正デモクラシーの時代は改造の時代であった」(『明治・大正の農村』岩波ブックレット、p52)と分析している。国家の改造、国防の改造、財政の改造、教育の改造、家族の改造など、どれ一つ取っても左右翼のせめぎ合いの時代である(右翼勢が勝っているため、差別排外主義が跋扈している)。後期には、労働・農民運動が拡大してゆくのだが、1925年の治安維持法によって戦争への趨勢は決定したと見ても過言ではないだろう。明治以来の学校と軍隊は、その決定に資するものになったのである。エリート層、都市住民層ほど熱狂していたのである。それは政府関係者や国会議員の発言などに頻繁に聴かれるものである。これにマスコミと芸能界が加算される。いわく、(核)抑止論と差別排外主義である。これらに対する反論が重要な論点である。他にもあるのだが(教育と農業である)、戦争勢力が主張する論点での核心点はこの二点なのである。抑止論によって軍部の増長があり、いざとなれば人々は飢餓状態となるのである。現今の物価上昇はその兆しである。
 とどのつまり、ウクライナ戦争に乗じた国防論議(抑止論)を徹底的に排斥し、差別排外主義に抗することが重要なのである。俳人・金子兜太は、その遺言とも言うべき著書の中で、松本連隊が派遣されたトラック島の経験を記述しているが、戦争は結局、餓死となり、残虐の非業の死だけなのだと断言している。彼は、自己防衛に走り、現実に妥協して(p158)憲法すら拡大解釈で空洞にする、戦争の実体を知らぬ勢力を終始批判している。加えて、「大きな権力に便乗して自分の鬱憤を晴らそうとする人たち」(p36)の登場を許してはならない、とも警告している。渡辺白泉の「戦争が 廊下の奥に 立ってゐた」という俳句が、卑近に感じる時代なのである。

| | | コメント (0)

« 2023年1月 | トップページ | 2023年3月 »