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2021年3月 2日 (火)

反ヒューマニズムへの階梯

9d8ac3528435eb2b4c2803fb11ea4a16206x300  全国の農業集落数は、2020年においては13万8千になっていて、漸次その数は減少している(2020年農水省センサスこれ)。この本が執筆された1978年の14万2千と比較すれば、それ程減少していないのではないかと勘違いするが、限界集落の離散や集落の都市化・混在化の流れは止まることはない。農業人口(基幹的農業従事者)は136万人程となり、高齢化(7割)と併せて、減少が一段と加速化しているのである。村落共同体としてのムラ社会は形骸化して崩壊の一途である。戦後の自民党政府による農業政策が一貫して失敗していると言っても過言ではない。ムラの崩壊と同時に都市化が進展し、農業の多面的機能が強調されてもその流れは止まらない。戦後直後の一時期を除けば、元来農業は弱かった、と著者は強調している(p199~201)が、狭い集落道路を車で運転していると、「ああこれは元々リヤカー道だったんだな」と感慨を覚えることがある。水田や畑、農道や農業用水、神社や寺院などの風景を眺めていると、そこには子どもの姿もなく、人影も殆どない。村はずれの幹道では車が引きも切らずに走っているのとは対照的である。共同体の残骸と言ってもいいだろう。しかしながら、いかに都市化が進もうとも、村落共同体は形骸化しながら下げ止まりするのではないか。なぜなら、農業は基礎的産業として生き残るのではないか。そこに人間の生活があるからである。農業が存廃される時、人間もまた廃棄されるからである。欧州の農業政策では、小農が推進され、手厚い補助金によって保護されているそうである(『コロナ後の食と農』吉田太郎、参照)。
 もう一つの懸念があるが、それは気象庁の指針に沿って長野地方気象台が本年度から「生物季節観測」として、動物17種をゼロに、植物26種を6種に縮小するという発表されたことである。動物のヒバリやウグイスの初鳴き、ツバメやホタルの初見、県農産物であるアンズやリンゴの開花などを全廃することになったのである(信濃毎日新聞2020年11月11日号)。60年前には、河川にはアヤメが咲いてホタルが飛び交い、麦畑にはヒバリが空高く囀り、夏にはヒグラシが鳴いて夕涼みをしたものであるが、今日のムラでは、これらの動植物はほぼ全滅しているのである。農産物は堆肥ではなく化学肥料によってつくられていることを知っている人は少ない。人気のイチゴやトマトが化学肥料の味をしていることにも気付かないのである。自然の循環をせずにゴミを外部化して焼いたり埋めたりしている社会なのである。そして油脂過剰で大味なグルメの番組が花盛りなのである。転倒したこの社会を正すのはいつになるのか心配である。衰退・全滅した先の未来はどうなるのか。けだし、自然環境とその土地から切り離された人間そのものが問われているのである。

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