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2018年1月23日 (火)

今、緊要なこと

33587240 図書館で検索し、見つけた新書である。金欠症のために滅多に書店では購入しない。ただ、必要とあらば財布の底をはたくが、何分(なにぶん)書棚がないので目一杯の本の処分に苦慮し、挙句の果てに廃棄しまうことになるためである。従前、高村の書物は愛読者ではないが、いつかは大部な小説を読み切ってみたいと思い合わせていたところである。いつものように、安直にも、時評集からと考えたのである。それは、2014年から2016年までの時代時評に講演録を二つ加えた覚書である。どちらかというと、講演録の方(就中、「信州岩波講座」、p156~)が高村の思慮を理解する上で手っ取り早いのではないか。作家的な観察力が利いていると思われるからである。
 即ち、東北大震災、その前兆である阪神大震災など、言葉を失う体験から一人一人が未来へと言葉を紡ぎ、言葉にすることで未来への意思を持つことである。やはり物書きに多い、言葉の力のへの確信である。キーワードは、人権意識と歴史認識の徹底であり、平和への希求であり、日本文化遺産の再生である。七十有余年に渡る戦後の歴史を改悪するために、ネトウヨ首相はもぬけの殻になってしまった日本国憲法の産廃処理を政治日程に仕掛けているのだが、これは確信犯がなす業である。30年来の右傾化に乗じて、嘘と出鱈目な言葉が氾濫し、低劣な言葉が飛び交っている。戦後的な繁栄は空虚となり、諸処の極右政党がこの政権への「消極的な承認」(p73)を利用して国会議員の三分の二勢力を獲得してしまっているのである。しかしながら、極右首相が国民の生命と財産を保証する訳ではない(高村薫は「仮想」と呼んでいる。p45)。このことは既に福島の原発事故で実証されているのである。繁栄する日本経済というものも幻想になってしまっている。産業もない、科学技術もない、まともな政治家もいない、子供も少ないという荒涼とした現実を目前にして、極右政権が跋扈する余裕などない地点にいるのである。憲法改悪と原発推進の反動政権には、破滅しか待っていないのである。戦前の歴史をしっかり認識すること、これが今、緊要なのである。
 しかしながら、結尾の「当面私たちに残されている道は、すぐ後ろに迫ってきている大波に呑み込まれないよう、黙って逃げることだけである」(p214)という言葉は、この時評集を棄損してしまっているのではないか。今日は、白根山の爆発と地震が懸念されたのである。天変地異はそんな日本人を待っていないかのようである。

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» またしても沖縄で米軍ヘリ不時着・・・整備不良が常態化してるってことか、くそッ!&草津白根山噴火。凄まじい破壊力の噴石が原発を直撃したら・・・想定外じゃ済みませんよ!!!! [くろねこの短語]
 沖縄でまたもや米軍ヘリが不時着。「警告灯が点灯したから」と言ってるが、確か伊計 [続きを読む]

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