『餓死した英霊たち』
大本営に所属する陸軍参謀作戦課幕僚層の戦争責任を論旨明解に開示した告発本である。「はじめに」と「むすび」を一読すれば、概要が把握でき、結論も理解できる。曰く、アジア太平洋戦争において、軍人軍属の死者数230万人の内、過半数(6割強の140万人)が、名誉の戦死ではなく、飢餓地獄の中での野垂れ死にだったということである。人災であることを剔抉していることである。ここで興味が湧いた問題は、著者は本の中で、「礎」論を全く展開していないことである。このことに歴史学者としての良心を感得した次第である。右翼の「英霊」論に対置されて、左翼・平和主義者の中には、相当数の「礎」論者がいるのであるが、これにはひどく違和感を覚えてしまうのである(つづく)。
実を言えば、本ブログのアクセス数が激増するのはサクラの時期である。このシダレザクラのスナップは好評である(これも)。サクラを鑑賞する時には、アンビバレントな感情に捉われてしまう。その美しさに感動したいという気持ちがある一方、だからどうしたの、という開き直りの感情である。日本人の一部の人々にとっては、サクラに国粋的な感情を移入した歴史がある。殊に、本居宣長の敷島の和歌である。上田秋成が仰るとおり、頭がどうかして、クダラナイとしか言い様がない。サクラはきっとはた迷惑な思いをしていることであろう。
やはり、今年の光林寺のスナップである。サクラだけでなくヒトの姿を映しこむのが自分の写真技術の方法である。サクラ単体としての映像には全く興味がない。老婆が正門に向けて階段を一歩ずつ登っている。サクラが招いているかのようである。サクラもまたヒトを見つめているのである。
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