戦争が始まっている
中東研究の第一人者らしい。「らしい」というのは、よく知らないからである。そもそも、東大・慶大系の学者は信用していない。坊ちゃん・嬢ちゃんの出自がほとんどで、単なる研究者に過ぎないのであれば、面白くも何ともない。中東に石油資源を依存する日本が、中東の「安定を望んで」西側諸国(正確にはアメリカ)に追随し、内政不干渉の原則を捻じ曲げて、大量破壊兵器の保持という虚偽でイラク侵略戦争(2003年)に加担したのは、まだまだ記憶に新しい(2004年)。それまで構築した中東親善外交が破棄され、日本が中東諸国の敵になった歴史的瞬間である。それは同時に、日本政府は中東における戦略的外交と情報を失うことなり、アメリカに隷従するようになったのである。中東問題について、日本政府が寄与することはなくなったのであり、アベの歴訪は、一部の王政国家を除けば、アラブ・イスラム諸国はあり得ない。筆者の言うように、親日感情の強い中東諸国が、「イラク戦争以降、ばったりと(日本との関係を)途絶えている」(p195)のである。日本はどん詰まりに嵌ってしまったのである。一体、どのようにだろうか。右翼・ファシスト政権(第二次アベ改造内閣)の誕生である。『花子とアン』という、大本営テレビ局の連続テレビドラマが耳目を引いているようだが、事実は、花子は率先して戦争協力したのであり(殆どの文学者・文化人は戦争加担した)、それはクリスチャンとしてあるまじき行為であり、その信仰が怪しまれるのである(殆どの日本のキリスト教会は、未だに戦争責任を放棄している)。それで、このところの朝日バッシングであるが、3Kとゴミ売りだけでなく、俗悪な週刊誌が続き、アベと右翼閣僚が恫喝する事態にまで発展している。政府の提示する、伏字のある「吉田調書」など全く信用のならないものであり(調書内容が、人災の原因と事故対応そのものについて、極めて曖昧な証言の羅列である)、「吉田証言」にしても、従軍慰安婦の存在自体を否定するものではない(むしろ国の関与を秘匿して行われたものであり、国際社会はその人権侵害そのものを問題にしているのである)。朝日新聞を叩いてメディア統制しようという恐るべき事態が進行しているのである(特段、朝日を擁護する理由もないが)。
で、この本であるが、各章・各節の要約が最後に纏められているのがよい。しかしながら、「想像力と共振性の欠如が深刻な対立を生んでいる」(p213)と抽象的に述べているだけでは説得力に欠けているのではないか。中東を語る時には、欧米帝国主義の歴史的関与を詳細に開示しなければならない。でなければ、中東の人々の苦悩を理解できないだろう。また、彼らの多くの歴史的証言が必要である、と思う。ジュニア新書であるので、対象読者の関心を引くという入門書としての限界を感じながら読了した次第である。
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