悪弊を絶つ
若月俊一の偉業はよく知られている。信州の農村医療に挺身した人物である。この本の中において、医療は誰のものであるのか、医療の主体は誰なのか、ということが鋭角的に展開されている。若月思想(若月イズム)の本質は、ヒューマニズムと民主主義と協同の三つであるという言葉に収斂されている(p73)。佐久総合病院の役割と規模が大きくなればなるほど、それだけ原点に回帰する必要は増しているということである。
息子は帰宅すると、おもむろに「白文帳」なるものを取り出して、毎日、漢字練習をしている。これは信州国語教育の悪弊の一つであるが、早期に廃止してもらいたい。漢字は本来文脈の中で理解し、記銘していくものであるが、この作業は、わざわざ国語を嫌うことを誘引してしまっている。特に、勉学が苦手の生徒諸君には、この漢字練習は難行であり、苦役でしかない。自分も小学生の時に宿題として課せられて閉口したことを記憶しているが、何の役には立っていない。むしろ、中村先生の読み聞かせ授業が契機で、その後、濫読に邁進したことが自分の国語力の基盤形成となっている。また、この苦役のために字が乱雑になるばかりか、時間を取られて、他の教科にも悪影響を与えている。さらに、漢字の意味と用法を理解しないものだから、国語表現力にも悪影響を来たしている。これと類比していることが日本の政治にも実行されようとしている。違憲(状態)の選挙で選ばれた首相や閣僚が、憲法を遵守しなければならない義務を放擲して、憲法違反を率先しようとしているのである。嘘と放言ばかりの、この内閣による集団的自衛権の容認・行使のことである。この二つの反知性主義を截然と断罪しなければならない。その悪影響は計り知れない。あの津波のように、一切合財を飲み込んで破壊してしまうのである。
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