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2013年7月20日 (土)

参院選後の行方

31865041  右翼政権が跳梁跋扈する理由のもう一つは、根源的には、日本人の世界観に由来するものであろう。故・加藤周一氏は、『日本文化における時間と空間』において、「今=ここ」に集約される世界観を提示されている。その世界観は、過去を水に流し、明日は明日の風が吹き、鬼は外という俚諺に象徴されている(p1~4)。それは農耕社会が育んだ共同体意識(=集団主義)である。高度経済成長はその価値観で成功したが、それが機能不全に陥っているのである。今次の参院選で再び自・公を選択したとしても、何も収拾されるどころではなく、益々事態は混迷を深めるばかりなのである。だからといって、自・民や維新やみんなのように、市場原理主義の自由主義経済は、各国の政府を破綻に追い込み、民衆を塗炭の苦しみを与えるのみである。NHKニュース(大本営発表)は、参院選の焦点は「ねじれの解消」などと報じているが、これは与党に加担した物言いであって、政治的中立を完全にかなぐり捨てた報道姿勢である。だから、これに受信料という追い銭を渡すなどは尋常ではない。支配する側から見れば、権力と金、これが全てである。これからは民衆に権力が行使される時代となる。戦後の一時、「転向」の問題が論議されたことがあるが、転向した学者・知識人の転向論議など片腹痛いの一言である(吉本隆明)。加藤氏は、「大勢順応主義(conformism)は集団の成員の行動様式にあらわれた現在中心主義」(p121)であり、「(その)要点は、順応の内面化」(p127)である、と説いている。現状に何も疑問に思わないことは、右傾化の一つのmerkmal(指標)なのであろう。また、日本人の集団志向性はそれを下支えしている。しかし、騙されたものにも騙された責任がある、と喝破したのは小出裕章氏である。そして、こうした日本人の心性を常に注意喚起し、批判して行動することが必要な状況になったことは言わずもがなである。

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