真の「構造調整」
世界では10億の人々が飢餓状態であり、その半数はアフリカに集中している。ために、一日に二万五千人が死地に追いやられている(p8~9)。この問題への関心は、スーザン・ジョージの『なぜ世界の半分が飢えるのか』(1976年、原著初版)という名著以来であるが、実は、読んでいない。多分、35年前に彼女が指摘した状況とほとんど何も変わっていないだろう。この本のサブタイトルには、「先進国の余剰がうみだす飢餓という名の人災」とあるが、今や、というよりは、当の昔から食糧はビジネスであり、国家戦略なのである。著者らは件のWSJ紙の記者であり、基本的な姿勢は透けて見える。いわゆる「緑の革命」の推奨であり、単なる食糧援助でなく、「国際社会の不均衡なパワーバランス」を正すという「良心」的な支援である。監訳者も緑の革命の支持者である。とはいえ、最も興味のあったことは、食糧援助の「鉄の三角関係」(p148)と知られる既得権への取材内容であり、アフリカにおける小農たちに関する記述であった。やはり、ジャーナリストだけに現状がリアルに理解できる。しかし、それだけである。「構造調整」(Structural Adjustment)に対しては、真の意味での「構造調整」でしかないのである。
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