自己責任論批判の書
1970年頃、若者の政治的熱気のある時代でも、「しらけ」とか「三無主義」(無気力、無関心、無責任)などと、大人の冷やかな目線があった(中小企業の健全経営の目安として、無借金、手形無発行、雇用ゼロという三無主義もある。笑)。若者の政治的無関心は、投票率の低下という形で具現してはいるが、無関心ということではなく、興味がないだけに過ぎないと思っている。小泉ニセ改革で騙された国民も、この所の金融恐慌や雇用不安などの情勢にまともな感覚を取り戻しつつあるのかも知れない。潮目が変わって来ているのである。コイズミなど既に賞味期限切れになって腐敗を極めている。この本を殊更目新しく感じることもないが、基本的には「自己責任論」批判の書であると受け止めた。「あんなやつは死んで当然」「貧困・失業なんて甘えている」「格差があるのは当然」「何でも社会の所為にするのは間違っている」など、コイズミが撒き散らした個人責任論は、今ではあまり耳にすることが無くなっているが、声高に論じていた人間が黙ったに過ぎない。ある意味では、こうしたインチキな個人責任論に対置されるものが政治である、と言えるのかも知れない。なぜなら、「世の中に何も問題がなく、現状のままでよければ、そもそも政治という作業は必要ではない。現状に問題があると思うためには、それを正すためにこそ、政治は必要である」(p97)からである。搾取と収奪の中で、貧困と失業に喘ぐ若者に、絶望して自暴自棄や諦念の陥穽に嵌まらないように10のルールをマニュアル化している。
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