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2009年1月25日 (日)

21世紀の暗黒大陸?

31896958  『老人ホームをテストする』の狙いは簡明である。即ち、介護の心を取り戻して利用者が希望する介護の仕組みづくりである(p83、142、268)。介護業界は、見た目ではよく分からない。悪意で捉えれば、魑魅魍魎の世界である。経営者からして、医療関係者を始め、建設・不動産業界の参入や役人の天下りなど、福祉とは無縁な人間がトップに座っていたりする。元々、福祉はサービス業であるにしても、決して儲かるものではないのに、地域のあちらこちらに施設が目立っている。また、学者や介護士やボランティアなどの、ご高説(ユニットケアのもてはやし)やカリスマ性や「善意」が入り乱れて訳がわからない。こうした側面は、利用者の家族や関係者に意外に知られていない。老人ホームが21世紀に残された「暗黒大陸」と謂われる所以である(p13、270)。タコツボ社会である介護業界に、介護サービスを生み出している仕組みに着目して、老人ホームを商品テストする試みは、確かに一石を投じる意義があるだろう。急速な高齢社会の到来と人材の慢性的な不足という現実の前で、介護の全般的な底上げが必要になっているのである。しかしながら、こうしたサービスシステムの平均点アップをしたとしても、福祉は人(p66)という限界があることも確かである。そのことも問題にすれば、大局的に介護保険制度そのものも問題にしなければならなくなる。行政の指導もあり、個別の介護施設が特色を発揮するのはほとんど不可能である。だが、それは本書の領域外である。さて、施設をテストする場合、施設の雰囲気や利用者と職員の表情を五感で感じてみると、直感的に理解もできる側面がある。利用者が無表情にテレビを眺めていたり、眠り込んでいる風景が飛び込んでくるだろう。また、職員が忙しく義務的に接遇する風景が見えたりする。この本で提起されているチェック項目をチェックすると(笑)、生活の場としての施設ということもあって、三大介護(食事・排泄・入浴)中心になるのはやむを得ないこともあるが(それは逆に、ターミナルケアの重要性を内包する)、例えば、第三者的に家族会があって利用者の意思が尊重されているか、個別に利用者に役割や生き甲斐が検討されているか、リハビリが意識的に取り入れられているかなどの欠落点や不足点があるのではないか、と思う。

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