認知症介護のあり方
高口光子氏の著書を読んでいて感心するのは、認知症のお年寄りに(介護員が)してあげたいことという視点ではなく、「認知症のお年寄りが私たち(介護員)に伝えたいこと」(p4)という傾聴の原則を貫いている点である。これが介護の仕事を続けていると、慣れもあって馴れ合いになるか、してあげているという意識の逆転があったりで、介護の陥穽に嵌まったりする。だからこそ、この本に詰まっている事例やエピソードが「びっくり」なのである。介護の仕事は素人に向いている、と何処かで読んだことがあるが、介護の学校を卒業してきて、現場でそれなりの責任を受け持っている人が、意外に利用者に命令的に、あるいは指示的な口調で介護をしている例を目にすることが多い。ぼーっとしているお年寄りを見て、主体の崩壊を見ずに、病名を当てはめて納得したりする(p177)。素人が適しているのは、「介護の基本は我が身に置き換えること」(p64)だからであろう。認知症(ぼけ)介護は一般的に困難なものと認識されている。しかし、困難な事態は、言い換えれば、チャンスということでもある。問題行動として彼らは訴えているのであり、それを介護チャンスとして捉える必要があるだろう。この本は、介護者の基本原則を始めとして、認知症介護とはという問いに対する回答や人間論まで踏み込まれており、介護に従事する人とって有益である。
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