二つの視点
アフリカについて考察する際に、大切と思われる視点は二つあると思う。一つは、これまでの先入観・偏見を払拭することである。野生の王国、貧困と紛争などが大方のステレオタイプ的なイメージだろう。ここから安直な援助や慈善や自然保護などが志向される。しかし、これは他者の勝手な思い込みであって、実際はあずかり知れぬ自体が存在するのかもしれないということを、念頭に置かねばならないだろう。『アフリカのいまを知ろう』は、青少年読者向けということもあって、研究者の種々のインタビューから、アフリカの実相をおぼろげながら推察できる本である。アフリカ社会は多様でダイナミックな社会であり、アフリカ固有のあり方や論理(非常時リスク分散や混作農法など)を学ばなければアフリカについて知悉したとは言えないだろう。もう一つは、にも拘らず、世界史の中でアフリカを対象化する視点である。大航海時代から始まるヨーロッパ列強のアフリカ侵略は、帝国主義段階においては、アフリカは殆ど植民地支配下に置かれた。直線の国境線は分割統治の残滓である。それは今もって変化していない。1960年代の独立運動期には、民族自決権の承認は帝国主義の利害と裏腹であった。そして、利害の不安定化を抑止するためと防衛の観点から、国連をも巻き込みながら貫徹されている。今やアフリカは、帝国主義的市場経済とそのグローバル化が最も集中する地域として捉えることができるだろう。石油やレアメタルなどの資源輸出の外国企業による支配という事態はどうなっているのだろうか。このことへの言及もない『アフリカ・レポート』は、理解しがたい。アフリカには独裁者が多い、その理由は部族の利害があり、指導者の危機感がないからだ、という論理展開では何も解決しないのではないか(後ろの民間NPOの活動と人々の自立への努力という希望と対照させるためなのか)。次回のレポートを期待する。
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